【成幸読書選定本】TN君の伝記---いったいTN君とは誰なのか? [4834018844] :
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【成幸読書選定本】TN君の伝記---いったいTN君とは誰なのか?

864円

なだいなだ著◆この本は、1976年に出版された、小学生高学年にむけて 書かれた本です。それなのに、今までこの本の存在をしらなくて、 とっても後悔してしまいました。もし、あなたもまだなら強くオススメします。 TN君とは、実際に幕末明治という時代に生きた人物なのですが、 著者は最後まで、このTN君の本名を明かしません。 変わった本ですよね。 幕末明治の伝記を言えば、西郷どんや坂本龍馬など、 国家として、大きな役割を担った人物がほとんどです。 しかし、この伝記は、庶民側にたってTN君の生涯を記しているのです。 英雄の伝記も、もちろんその生き方に感銘し、憧れを持つことは とてもいいことであるのは確かですが、この本は、 一般庶民がテレビも電話もラジオもネットもない時代に、 どうやって情報を知り、何をどう庶民が感じ取っていたのかが、 手に取るように読む者に伝わってまいります。 一部、「まえがき」から下記にご紹介しましょう。 「ここに一人の人間がいる。TN氏、TN先生、いろいろ考えたすえに、 彼をTN君と親しみをこめてよぶことにする。 ぼくは、これから、そのTN君の伝記を書こうと思うのだ。 伝記を書くなら、どうして、本名を出さないのか、君は疑問に感じるかもしれない。 だが、答えは簡単だ。ぼくの知ってもらいたいのは、 彼の名前ではなくて、彼がどんなふうに生きたか、ということだからだ。 そのためには、名前なんてじゃまになる。 そう思ったから、名前は出さない。名前というのは不思議なものさ。 なんべんも名前を聞いて、顔をおぼえると、それで、 その人間のことが、よくわかったような気がしてしまう。 たとえば、いまの総理大臣を、君はよく知っているような気がするだろう。 だけど、彼が戦争中はどんなことをしていたか、どんなことをいっていたか、 知っているだろうか。 戦後、どのようなことをしてきたのか、知っているだろうか。 そう考えてみると、自分の国の政治をあずけている人間のことを 意外と知っていないことに気がつくだろう。 ぼくたちは、名前と顔を知れば、なんとなく、その人間をよく知っていると 思ってしまう。こうして政治家たちは、選挙のために顔写真のポスターをはり、 名前だけを、こわれたレコードのように、くりかえすのだ。 ぼくが、名前がじゃまだという意味が、わかっただろうか。 だから、君は名前なんか知ろうとせず、ある一人の日本人が、 ある時代をどんなふうに生きたか、ただ、それだけを知ろうとしてほしい。 そして、できれば、TN君という人間の目を通して、歴史の本を通して見るように、 歴史のこちら側からでなく、向こう側から、彼の生きていた時代を見よう としてもらいたい。」 いかがでしょう。ぼくはもう「まえがき」でしびれてしまいました。 ”歴史のこちら側からではなく、向こう側から” とありますが、まさに歴史を知ることだと同感いたします。 次に「あとがき」も下記に一部ご紹介いたします。 「いまから、およそ百十年ほど前、日本で明治維新という革命がおきた。 革命にもいろいろあるが、自由と平等をもとめた人々のおこした革命である。 政治の権力は、その結果、徳川幕府から、天皇の明治政府にうつった。 しかし、革命をおこした人たちは、 ただ権力を徳川から天皇にうつせばいいと思っていたのではない。 多くの人々は、いまのままでは、もうがまんがならない、 世の中をひっくりかえさねばならない、という気持ちになっていたのだ。 たとえば、大名の家に生まれたものは大名で、いばっている。 農民はいつまでも農民で、税金に苦しまなければならない。 おなじ人間なのに、どうして、生まれで、こんな差別をうけねばならないのか。 そういう不満もあった。おなじ人間なのに、税金ばかりとられ、 その税金の使い方に意見もいえない。 戦争がおこれば、死んだり家をで焼かれたりするのに、 自分たちはいやだとも言えない。こんなことではこまる。そういう不満もあった。 その不満が爆発して革命をおこさせたのだ。 しかし、べつの不満をもった人たちもいた。 ばかな幕府の政治家にまかせておいたら、日本は外国におくれてしまう。 強い外国にほろぼされてしまう。わしらにまかせろ。彼らにまかせてはおけない。 そう考える、りこうものたちの不満である。 この人たちは、革命がおこったので、自分たちが権力をにぎることになった。 いいかえれば、人間とはなにか、自由に生きられて、はじめて人間ではないか、 そう考えた人たちが革命をおこし、日本をヨーロッパの国々に、 力で対抗できるような国にしよう、と考える少数の人々が、 そのおかげで権力をにぎった。その人たちは、 革命をおこした人々の気持ちをふみにじって、 ただ日本を強い国にしよう、進んだ国々にしよう、とだけ考えた。 革命をおこした人々は、自由がうらぎられたと思った。 わしらは、こんなことをのぞんではいなかったのだぞと思った。 そして、もう一度、革命を自分の手でおこそうとする。 だがそれはつぶされてしまう。 明治維新は、その人々にはうらぎられた革命であったし、 挫折した革命ともいえるわけだ。 TN君は、そうした人たちを見まもりながら生きた人だ。 ぼくたちは、歴史を、自分たちの時代から見る。 そして、権力をにぎった人たちを主役にした芝居のように、歴史を見がちになる。 だから、どうしても、かげになって見えない部分、見えない人物がでてくる。 明治革命をおこした人たちは、権力をにぎった人たちのかげにかくれて しまっている。でも見えないから歴史がないというわけではないのだ。 TN君の伝記を書いたのは、君たちに、その見えない部分を、 TN君の目に入らなかった、多くの人々もいたにちがいない。 君たちが、そのような人たちの姿を見せてくれるような人の伝記を、 いつの日か書いてもらいたいものだと思う。 1976年3月末 なだいなだ」 「まえがき」と「あとがき」をご紹介しましたが、 肝心の本文を読むともっとしびれます。 読んでいてびっくりしたのですが、TN君の時代といま現在とが、 あまりにもよく似ているのです。きっと驚くと思いますよ。 ですから、一般庶民の人たちが、どう考えどう行動したかが、 私たちの生き方にとっても参考になるのです。 歴史はそもそも「鏡」と言われます。歴史を知っているだけでは、 絵に描いた餅です。自分自身に照らしあわせて読んだ時、 それは揺るぎない大きな心棒を獲得する。 白駒妃登美さんの口から歴史が語られる時、多くのみなさんが 歴史上の人物や出来事に感動するように、TN君の目から見る歴史も とても感動するはずです。そして、いま自分自身がどう生きるか? 参考書になるはずです。だから、今まで読んでこなかった自分を後悔 してしまったのです。みなさんもこの本を読まなかったことに 後悔をされませんように!

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